矢澤一彦 5歳よりピアノを始める。東京芸術大学音楽学部附属高校、同大学を卒業。フランス国立リヨン高等音楽院で半年学んだ後、ベルギー王立ブリュッセル音楽院のエフゲニー・モギレフスキー氏のもとで1996年より8年間学ぶ。和声、ソルフェージュ、鍵盤和声、室内楽、音楽史の一等賞(プルミエ・プリ)を経て、ピアノ科最高課程、ピアノ伴奏科、室内楽科最高課程を優秀な成績(満場一致、グランドディスタンクシィオン)で卒業。同校より,ヴィルドマン賞、ガリオ賞、パッパール賞、バシュビッツ奨学金を受賞。1997年ヴェルナー財団奨学生。
1994年多摩フレッシュコンクール入選、1999年マルサラ国際ピアノコンクール第5位、同年アンドラ国際ピアノコンクール第3位、2000年オルレアン国際20世紀音楽ピアノコンクールファイナリスト及びリカルド・ヴィ二ェス特別賞、2001年カラブリア国際コンクール名誉ディプロマ。また、マスタークラスで、ハリーナ・チェルニー・ステファンスカ、ピョートル・パレチニ、ヘルベルト・ザイデルの各氏に習う。
ヨーロッパ滞在中、大原とのリサイタルのほかに、ブリュッセルや、リクサンザール「四季」音楽祭、アンギアン「ムジカ・ステランティス」音楽祭、コルトレイク「ユーテルプ」リサイタルシリーズ他、30回以上のコンサートに出演する。また、国際的作曲家であるミハエル・ゲラーの新作、5人の奏者による宗教室内オペラ「ロトの娘たち」を、オランダの5都市で上演し、好評を博す。
2005年の帰国後も、リサイタルや夫妻によるリサイタルなど活発な演奏活動を行い、帰国してから現在(2017年12月)まで約140回出演する。5回の東京オペラシティリサイタルホールでのリサイタルや、2017年10月に25回目を迎えた夫妻によるコンサートは、毎回好評を博している。また、ラ・フォル・ジュルネ関連イヴェント、日本ショパン協会例会、日本・ロシア音楽家協会コンサート、東京芸大フレッシュコンサートなどの出演や、オーケストラとチャイコフスキー、ラフマニノフ、アレクサンドロフ等の協奏曲を協演している。
これまでに岩田和子、岩谷なつ子、山岬薫子、小林仁、青柳いづみこ、エリック・ハイドシェック、エフゲニー・モギレフスキーの各氏に師事。東京芸術大学音楽学部附属高校講師を経て、現在昭和音楽大学講師。日本・ロシア音楽家協会運営委員、日本ショパン協会会員、全日本ピアノ指導者協会正会員、相模原音楽家連盟会員。
近年、特にシューベルトのその深い演奏解釈において高い評価、定評を得ている大原亜子(M氏)
桐朋学園大学ピアノ科卒業。1995年渡仏。2005年帰国。フランス国立マルセイユ音楽院第3課程を経て、ベルギー王立ブリュッセル音楽院で、エフゲニー・モギレフスキー氏に7年間学ぶ。モギレフスキー教授から音楽に対する妥協のない熱意を肌身を持って教わる。ピアノ科最高課程、室内楽科最高課程を優秀な成績(満場一致、グランド・ディスタンクション)で卒業。2000年カラブリア国際ピアノコンクール名誉ディプロマ受賞。ヨーロッパ滞在中、夫の矢澤一彦とのリサイタルのほかに、ブリュッセルや、リクサンザール「四季」音楽祭、ゲントクラシック音楽祭2003他多くのソロリサイタルや室内楽コンサートを行う。20世紀ベルギーを代表する作曲家アンリ・プスールの作品を演奏し、作曲家から賞賛される。2007年東京オペラシティリサイタルホールにてオール・シューベルト・プログラムによるデビュー・リサイタルを行う。音楽誌の演奏会評で、「作曲家に寄せる共感と思い入れが強く伝わってくる(中略)見事な一夜であった(T氏)」と評される。2008年、ラ・フォル・ジュルネ、・熱狂の日「シューベルトとウィーンの作曲家」のFSS主催コンサートに出演。2008年、2009年、2011年、2013年、2014年、2018年、2019年、2022年、鹿児島と東京上野の旧奏楽堂、東京のサローネ・フォンタナ、横浜市岩崎博物館ゲーテ座、横浜市大倉山記念館ホールでシューベルト・リサイタル。いずれも好評を得る。横浜イギリス館で2005年秋から、年に2,3回矢澤一彦と行っているサロンコンサートも2024年秋には36回目を迎え、聴衆や音楽雑誌批評欄に好評を得ている。これまでに、諏訪ひとみ、岩田美紀、田原さつき、兼松雅子、村上弦一郎、ジャック・ルヴィエ、エフゲニー・モギレフスキーの各氏に師事。ピティナ会員。
(演奏会批評より)●大原の演奏から強く感じたのは『同化』である。長大で退屈しがちなシューベルトのソナタが、大原の手にかかると、目の前にシューベルトが現われ、奏でてくれているような錯覚を覚えるほどのリアリティを持って提示され、時の経つのを忘れるほどひきつけられた。(H氏)●大原亜子のシューベルトに寄せる想いは温かく、時に切ない。こういう歌い口は作って出来るものではなく、このピアニストの生来の個性だからこそ感動を呼ぶ。深い情緒に満ちたロマンを表現した演奏に拍手。(K氏)●大原はシューベルトを「偏愛している」だけのことはある。主題が出現するたびに、丁寧な打鍵と輝く音色で、まるで時間とともに変わり行く日差しのように微細な温度の変幻と陰影を放つ。それはシューベルトのソナタの在り方自体を慈しむような演奏で、アンテナの深いところで作品に共振した佳演は、作曲家の姿まで彷彿とさせる。(O氏)●非常に豊かな心に満たされたひと時だった。あふれるような歌心と新鮮ですがすがしいロマンティシズムにあふれたシューベルト。(K氏)●大原は、さらなる深淵へ歩んでいるらしい。大原の弱音には信じられないほどの感情表現がある。(H氏)●大原亜子のシューベルトはやはり期待を裏切らない。演奏家の内面に音が蓄積され表現への熱が膨らんでいく。音符には、本当に蓄積された場感性こそ託されるべきもので、大原の静謐な進行と指先から熱さがほとばしるような演奏には、いつもながら作品にとって偽りのないシューベルトを聴いた思いがする。(O氏)●感動的な美しい場面が数多くありとても魅力的だった。(A氏)●変幻自在なタッチを通して生み出される多彩な音の質は、豊穣にして精妙な感情表出を生み出し、殊に緩徐楽章における、息をのむような弱音の美しさは筆舌に尽くしがたい。(M氏)●ショパンバラード3番。はっと息をのむような美しい瞬間に何度も遭遇し感動した。(H氏)●シューマンの言葉をこれほど深く語りかけてくれるピアニストはそう多くはないだろう。第1曲目から8曲目までそれぞれのキャラクターを見事に紡ぎ上げた。それは色彩の豊かさや、縦横な技巧の展開だけではなく、このピアニストの感性と深く結びついて、きわめて精気に富んだ世界を現出させていった。(k氏)●大原亜子が得意とするシューベルトのリサイタル。D664主題の美しい歌い口は、美しいシュタイアー地方、優しいシューベルトを聴かせた。第3楽章では、一転して、アレグロの技巧的な面を見せる。こうした楽章では彼女は心からピアノと戯れる。D958.これは、主題提示部の特徴的なリズムから始まり、絶望、諦観、光と影、夢想などが、ソナタ全体を支配する長大な作品。それらが、この小柄なピアニストの前身から溢れ出し、堅牢な建築物となって示された。期待に違わず作品の深い世界に導かれたひとときであった。●まず最初の即興曲第1番ハ短調、尋常ならざる集中力によって奏された出だしの第1音で一流のピアニストであることがはっきりと認識された。決して大きな音ではないのだが、音楽的重みは相当なものであり練り上げられた音であった。基本的にPをベースに進行していくが、その中で、P,PP、PPP,もしくはそれ以上の段階に繊細なタッチで弾き分けられており、既存の演奏とは全く別世界のものであった。このような、表現、演奏方法があったのかと驚きを禁じ得ない。以後、懐かしさや、孤独感など繊細な感情の機微が鮮やかに描き出され、最後は宗教的とも言える崇高な世界が作り上げられていた。中略 D664特に冗長になりがちな第2楽章は、思い切って呼吸をゆっくり取り大きく歌う・・・なんと心地よいことか。どの曲も、アプローチは慎ましく適度に抑制されていたが、その中に溢れる詩情があった。このシューベルトはそうそう聴けるものではない。(M氏)●大原亜子は、シューベルトの音楽を丁寧に愛でて、一心不乱に作曲家の心を表現しようとするその「大原スタイル」が高い評価を受けている。この日の演奏も、高価な宝石を光り輝かせるようにして発音してゆく真摯な姿勢に好感を持った。もう少し和声の推移におけるさらなる多彩な変化を表現したりすることでさらに彩り豊かな「大原スタイル」が築かれるのではないか。(N氏)●大原亜子のシューベルト演奏とその演奏解釈には定評があるが、この日も誠実を極めた演奏を聴かせてくれた。大原はシューベルトの心のひだまで丁寧に読み取り、それらを細やかな心遣いの行き届いた音、そしてこの上なく深遠な、それでいて温かみのある表現で導き出して聴き手の心へ伝えてくれた。(Y氏)●大原は、やや突進する傾向はあるものの、作品への強い思い入れと温かみを感じさせる演奏で聴衆を魅了した。モーツァルトは、楽器の特性を活かし極力ペダルを排除した丁寧なフレージングが良かった。シューマンは、スケールを大きくしたいためか、ペダルが多目の部分でメロディラインが少しぼやけてしまったのが残念だったが情熱的な演奏だった。(モーツァルト「デュポールの主題による変奏曲」、シューマン「ピアノ・ソナタ第3番」)A氏
エフゲニー・モギレフスキー教授による推薦文(2005年)
矢澤一彦への推薦文
私は、私の生徒であるピアニスト、矢澤一彦を熱烈に推薦します。とてもブリリアントなピアニストで、優れた才能のある音楽家です。
彼は、すべての様式とすべての時代の作曲家の作品からなる多くのレパートリーを持っています。それはとても豊かで奥深い本質です。彼はいつも音楽の美しさ、真実を見出そうと、探求しています。
しかし、私にとって、彼の演奏の一番の美点は、彼の「歌う指」です。その気品によって、ロシアピアノスクールの影響を認めることができます。
矢澤一彦は3つの国際ピアノコンクールに入賞しています。オルレアン20世紀音楽国際ピアノコンクールリカルド・ヴィニェス賞受賞、マルサラ国際ピアノコンクール入賞、アンドラ国際ピアノコンクール第3位入賞。
エフゲニー・モギレフスキー、ベルギー・エリザベート王妃記念国際コンクール第1位、ブリュッセル王立音楽院教授。
大原亜子への推薦文
私は、私の生徒であるピアニスト、大原亜子を熱烈に推薦します。彼女の卓越した才能に出会えたことは、私にとって幸いでした。
彼女はすぐれたピアニストであり、非常に才能に恵まれた女性です。
彼女はすべてを持っています; 最も高い水準のヴィルトゥオジテ、驚くべきエスプリと指の敏捷さ、音楽の深淵への完全な没入、並外れた拍子感、そして素晴らしい心の深さ。
大原亜子はカラブリア国際ピアノコンクールでの受賞者です。
エフゲニー・モギレフスキー、ベルギー・エリザベート王妃記念国際コンクール第1位、ブリュッセル王立音楽院教授。